二、旅立ち
彌生[1]も末の七日[2]、明ぼのの空々として、月は在明にて光おさまれる物から、不二の峯幽にみえて、上野·谷中[3]の花の梢、又いつかはと心ぼそし。むつましきかぎりは宵よりつどひて、舟に乗て送る。千じゅ[4]と云所にて船をあがれば、前途三千里[5]のおもひ胸にふさがりて、幻のちまたに離別の淚をそそぐ。
行く春や鳥啼魚の目は淚
是を矢立の初として行道なをすすまず。
人々は途中に立ならびて、後かげのみゆる迄はと見送なるべし。
注釋:
[1]陰歷三月。本文中所有月份,都為陰歷。
[2]下旬第七日,即二十七日。
[3]上野、谷中均為今東京都臺東區(qū)地名,古來就是櫻花勝地。
[4]千住,今東京都足立區(qū)千住町。當(dāng)時為通往奧州及日光道路上的第一個驛站。
[5]“三千里”為漢詩文中常用夸張說法。